犬の保護活動と啓発活動をしている動物愛護団体、NPO法人 DOG DUCAの2022年度の活動実績をまとめました。

※事業報告書はこちらから

なお、直近の活動状況は、保護活動ブログの方をご覧くださいませ。

保護活動について

昨年度の保護活動の実績報告です。

保護・譲渡実績

2022年は、継続飼養していた子と合わせて、84頭の犬を保護。譲渡実績は44頭でした。

高齢化していたり、持病があったりする保護犬もいるため、施設で継続飼養となった保護犬は42頭となりました(過去最高)。

2022年度に保護した代表的な事例をごく一部ですがピックアップしてご紹介します。

動物愛護センターからの保護

DOG DUCAのある名古屋市の動物愛護センターでは、2013年から殺処分ゼロが続いており、2019年には殺処分機が撤去され、ふるさと納税によって終生飼養の設備が整いました。

2020年には愛護センターの引取費用が2,500円→8,000円となり、2021年度の引取頭数はわずか12頭に留まっています。

そのため、DOG DUCAは現在、殺処分されない愛護センターからの引き取りは、他の団体さんが引き取れないような、トレーニングが必要な犬のみを保護しています。

5歳のチワワ、カーラとミーサ

咬みつきがひどくなったということでセンターに飼育放棄された、カーラとミーサですが、DOG DUCAで人馴れ訓練および、犬の社会化トレーニングを行いました。

すっかり人になじむミーサとカーラ

くり返される多頭飼育崩壊

以前も犬14頭、猫28頭の多頭飼育崩壊を起こしていた飼い主が、前回同様、ペットショップでどんどんと購入し、再度、犬18頭、猫24頭の多頭飼育崩壊を起こしました。

DOG DUCAだけでは保護できない頭数だったため、DOG DUCAにはその内の6頭を保護。他は動物愛護センターや他の団体さんに、猫は猫の団体さんに保護していただきました。

シーズーのアヤメ

いずれの子も毛に糞尿がこびりつくようなひどい状態で、健康状態も鼠径ヘルニアや下痢が続くなど、しばらく療養が必要な子もいましたが、幸いまだみんな1歳前後と若く、しばらく施設で過ごしたのち、多くの子が里親に行くことができました。

保育園で社会性を身につけてもらいました

動物愛護法はあれど、面倒を見きれないのに何回もペットショップで購入できてしまう、という現状があります。

2023トピック:高齢者起因の保護が激増

これまでは、高齢の飼い主と暮らしていた犬が、飼い主の死亡や入院、施設入所などにより継続飼育が困難という、「高齢者起因」で保護した案件は全体のおよそ3割程度でした。

それを受けて、2019年より、保護した高齢犬を高齢者に譲渡する、「シニアドッグ・サポーター」制度をスタート、昨年度2022年に保護した保護犬の多くが、これまでの2倍以上である、およそ67%が高齢者起因による保護となりました。

これまでも高齢者起因による保護は何件もありましたが、2022年は、高齢者起因による様々な案件がありましたので、事例を一部ピックアップしてご紹介します。

高齢者がペットショップで子犬を購入

単身の高齢者が、友人の反対を押し切ってペットショップで子犬を購入し、一緒に暮らしていたものの、末期ガンの宣告を受け、年末までは難しいということで8月に保護依頼。まだ5歳でした。

トイプードルのぷー

購入時のワクチンしかしておらず、病院にも行っていなかった上、トレーニングを行っていないため、少しでも気に入らなかったり、些細なことでも咬みつくクセがあり、現在もトレーニング中です。

高齢者から体罰を受けていた

こちらも高齢者がペットショップで子犬を購入した案件で、80代夫婦がケンカした末、夫が衝動買いしたようです。

7歳のチワワ、ソレイル

しかし、数年後に夫の認知症が進行し、杖で叩くようになったため、妻から以前新聞で紹介されていた「シニアドッグ・サポーター」制度のある、DOG DUCAに保護の依頼がありました。

慣れると甘えてきますが、叩かれていた恐怖があるため歯を出す時もあり、犬にも慣れていないので、この子も社会化トレーニングが必要でした。現在は里親募集中です。

高齢者に過保護に育てられた

こちらの子は逆に、甘やかされすぎて育った子です。

トイプードルのチェルシー

元々母子で生活していた家庭で暮らしていたものの、娘さんが結婚で家を出て、母親が面倒を見ていました。しかし、高齢の母親がガンとなり、飼育継続が困難になりました。

サークルでの留守番も多い、嫌がったから散歩もしない、オヤツだけでコントロールなど、適正飼育ができていない結果、気に入らないとすぐ咬みつくクセがついてしまい、11歳という年齢もネックで近隣の団体でも断られ、兵庫から名古屋のDOG DUCAに。

連れて来る時も、飼い主はキャリーに入れることもできないため、そのためだけにドッグトレーナーを呼んでキャリーに入れてもらってから連れてきました。

正しい接し方をすれば咬むことはありませんが、誰にでも譲渡できるわけではないので、現在も継続飼養の状態です。

高齢者が死亡し、1ヶ月置き去りに

ヨークシャー・テリアのMIX、リラは単身の高齢者と犬が暮らしていました。しかし、知り合いが飼い主と音信不通となり、警察が立ち入ると死後約2週間が経過していました。

その後もその家に置き去り状態が続き、約1ヶ月もの間、この子は電気もついていない家にひとりで残されていました。

推定12歳のヨーキーMIX、リラ(Lilla)

隣人が残されたリラのことを心配し、警察や愛護センターに保護してと依頼したが、飼い主よりさらに高齢の、認知症を持つ親が施設入所中で、所有権の問題で保護できないとなって、DOG DUCAにSOSがありました。

行政に動いてもらうため、こちらからすぐに市会議員に連絡を取ってセンターの職員を向かわせてもらい、行政書士などが間に入って所有権を解除して保護。すぐに病院に連れていきました。

乳腺腫瘍や膵炎があり、入退院をくり返して医療費が40万円以上かかっていますが、体重が2kgほどの小さな体で、よく生き残ってくれました。現在も療養中です。

シニアドッグ・サポーターでの譲渡

高齢者から引き取った高齢犬の中には、「シニアドッグ・サポーター」制度で、新しい環境で幸せに暮らせるようになった子もいます。

単身高齢者の支援者からの相談

単身の高齢者と暮らしていましたが、単身の高齢者や障害者の身元保証をしているNPO団体に高齢者本人が施設に入所したいという申請があり、対処に困った支援団体からDOG DUCAに相談があり、段ボールに入れられてやって来ました。

チワワとミニピンのMIX、ファイン

ふだんから散歩することもなく、年齢もよくわからない状態でしたが、団体の記録によると9年前にはいたということから10歳以上と思われます。狂犬病・ワクチンとも未接種、去勢手術もしていません。

未去勢のオスがなりやすい会陰ヘルニアがありましたが、人なつっこい性格のため、シニアドッグ・サポーターの里親さんのところで暮らしています。

飼い主が余命宣告を受ける

単身の高齢者が、犬2頭、猫5頭と暮らしていて、地域猫ボランティアをしている知人から、「飼い主が入院し、二週間が経っている」「飼い主は余命宣告を受けている位なので戻ってこない」「民生委員にも連絡したが、身元引受人と連絡がつかない」というSOS。

なんとか身内に連絡を付けてもらい、委任状をもらってすぐに保護しに行きましたが、家の玄関からゴミ屋敷で、家の中も相当荒れていました

一緒に暮らしていたマルチーズMIXのクリープと猫。
トイプードルMIXのアムール

猫は猫ボランティアさんが引き取り、クリープとアムールはDOG DUCAに。

トリミングしたクリープ

すぐ病院に連れていきましたが、アムールの右目は失明しており、左目も白内障の前兆があるため、将来的には失明する可能性がありました。

ふたりとも年齢は推定9歳くらいですが、人が好きなため、クリープはシニアドッグ・サポーターさんのもとで、アムールは新しい里親さんのもとで、新しい生活を始めることができました。

安心しきった様子のアムール

終生飼養犬の看取り

2022年は、終生飼養だった保護犬の内、5頭がDOG DUCAから旅立って行きました。

DOG DUCAの保護犬は、愛情ある家庭と同じように、「最大限の医療」を行い、最期の時まで寄りそったケアを行ってきました。

※名前は亡くなった時のブログにリンクします。画像はスライドできます

レーベン(2022/4/8)享年13歳

高齢者が飼育していたものの、ほとんどネグレクト状態だったのを見かねた出張トリマーさんからの依頼で2021年の11月に保護。
保護した時には大きな悪性黒色腫(メラノーマ)があり、除去したものの転移し体はガリガリで、余命宣告もされていましたが、よほど散歩に飢えていたのでしょう、散歩中に走ったり、他の犬と遊んだりして、幸せな時を過ごしました。ボランティアさんからも愛されていた子で、最期の日は多くのボランティアさんに触ってもらえました。

メイ(2022/5/19)享年15歳

2010年に保護。元の飼い主さんが訓練所に預けたところ、体罰を使ってしつける「陰性強化法」でトレーニングされてしまったことで、それができない優しい飼い主さんには、逆に咬みつく子になってしまいました
そのため、飼い主さんは「自分のところに来たことでメイを不幸にさせてしまった」と後悔していたので、メイをDOG DUCAで引き取り、愛護センターから殺処分寸前で引き取った高齢犬を代わりに面倒見てもらうことになりました(詳細は代表の著書ころんでも、まっすぐに!にも書かれております)。
信頼している人は咬みませんが、人の手に反応して咬んでしまう癖は最後まで消えなかったので、人間が正しく犬に接するということはどういうことか、学ばせてもらった子でもありました。

ナディア(2022/7/8)享年推定6歳

多頭飼育崩壊が発生したところから2020年に保護。何回かの出産形跡があり、同じミニピンのライナといつも一緒にいたので親子だったと思われます。
抱っこが大好きで、すぐに人に飛び乗る人なつっこい子でしたが、元々住んでいた場所でフィラリア感染しており、保護してから治療をスタートし完治を目指していましたが、感染症の影響で血管がつまってしまい、急に旅立ってしまいました。あたりまえの予防の大切さを再認識させられました。

リーバ(2022/8/15)享年推定15歳

推定2007年生まれで、2021年の年末に保護。10年以上、サークルの中だけでの生活で、病気になっても治療もしてもらえず、てんかん症状がひどくなり、怖くなったので飼育放棄されました。
会陰ヘルニア、肛門腺腫、甲状腺異常、腎不全などで、手術が必要な状態だが腎不全のため手術不可でした。また、体罰を受けていたようで、保護当初は手に咬みつくことがありましたが、心のリハビリを行い、思いっきり人に甘えることができるようになり旅立ちました。

ムー(2022/9/17)享年15歳

2020年保護。父親が飼育していたが施設に入るため娘が引き取るも、先住犬2頭がおり、マンションの規約に引っかかるためという理由で飼育放棄されました。しかし、保護時には歩き方がフラフラしており、つけてきたリードも「ウチの子のだから返して」と言われたので、散歩も何もせず放置していたのだと思われます。すぐに脳の前庭異常の治療に入り、ときどきふらつくものの、走れるようにもなりました。年齢的にも譲渡できないので終生飼養となりました。

いずれの子も、春日井市にある慈妙院さんにて、葬儀を執り行っております。

啓発活動

DOG DUCAでは、「捨てない飼い主を育てる」として、プロのドッグトレーナーが啓蒙活動を行っております。

昨年度行った、啓発活動をまとめました。

飼い主などからの相談対応実績

2022年度の相談件数は、86件ありました。

そのうち、およそ3分の1が高齢者本人および関係者からの、保護の依頼でした。

また、吠える、咬みつくなどの相談では、近年同様コロナ禍の影響で購入した飼い主からの相談があるため、ドッグトレーニングの提案を行っております。

そのほか、初めて犬を迎え入れる高齢者がペットショップで柴犬を購入し、言うことを聞かない、という案件も複数あり、高齢者と犬とのミスマッチが浮き彫りになっています。

また、「殺処分ゼロをうたう保護団体の譲渡会に行ったが、フードの購入や出産させるのが条件など、大丈夫だろうか」など、動物愛護団体を偽装した悪徳ブリーダーと思わしき団体についてのご相談もありました。

啓蒙活動実績

動物病院でのしつけ教室

動物医療センターもりやま犬と猫の病院にて、月1回(年12回)の無料しつけ教室を実施。

月に10組、年間120家族に対して、正しい犬との接し方を伝え、トレーニングの実演を行いました。

学校での講演活動

コロナの影響で学校での講演活動は少なくなっておりますが、名古屋市内の小学校にて、「生命(いのち)の大切さ」をテーマとした講演活動を4件実施しました。

オンラインセミナー

中日新聞グループの中日アド企画さまよりご提案をいただき、初の取り組みである、オンラインセミナーを複数回実施しました。

テーマは「保護犬と幸せに暮らすために必要なこと」や、「犬の気持ちを理解した上での正しいトレーニング方法」の2つで、計9回開催。毎回200人の定員が満員になるほど好評でした。

テレビ番組より時間をとれるため、不特定多数の方に、犬のトレーニングをすることの重要性や、保護や保護団体の実情を深く知っていただくことができました。

オンラインセミナーは保護施設で実施するため、画面越しにトレーニングの実演をできること、移動の時間がとられず、保護活動に充てられる時間をロスしなくて済むことも収穫でした。

今後に向けての課題

保護活動の変化

全国ではいまだ2,739頭*の犬が殺処分されている現状があるものの、DOG DUCAが活動を始めた20年前の2001年から比較すると、保護に関わる人たちのおかげで、大幅に減少傾向にあります
*2021年度実績

殺処分が減る一方で、これまで殺処分を行っていた動物愛護センターが引き取りを拒否するなどで、飼育継続が困難な飼い主がそのまま飼い続けてしまったり、適切な治療が行われないまま飼われ続ける犬もいます。

DOG DUCAでは、そうした保護活動の変化に合わせて、従来の「適正飼育ができない、愛情のない飼い主からの保護」のみならず、愛情があっても面倒が見られない高齢者からの犬の保護を行っております。

上がり続ける医療費

そのため、新規の保護頭数は減少傾向にあるものの、従来よりも高齢犬や病気のある犬の保護が増え、譲渡ができても飼養期間が長くなったり、譲渡そのものができない保護犬も増え、施設で継続飼養および終生飼養する頭数が右肩上がりに増えている現状があります。

また、それに合わせて、医療費(治療費・療養食)も右肩上がりで上昇。

以前は年間100万円前後だった医療費が、2019年10月に「シニアドッグ・サポーター」制度を始めた翌年からは200万円を超え、2022年にいたっては過去最高の300万円を超えてしまいました

フードにかかる費用については、amazonの動物保護施設支援プログラムを通じての支援や、メーカー様から送られてくるものがあるため、10年前と比較して大幅に増えずに済んでいるものの、医療費の増額は深刻です。

保護犬たちのために…

2022年は、皆さまからのいただいた寄付と、年末に100万円の大口寄付があったのでなんとか乗り切れましたが、今後もこのようなことが続く場合、現在の活動を続けていくことがさらに困難になります

かといって、ご紹介してきたように、高齢者が限界まで飼い続けることで不幸になる犬たちを放っておくこともできません。

犬も不幸ですし、それまで犬と愛情深い関係を築いてきた人間にとっても不幸です。

「人と犬のより良い共存」を掲げて活動するDOG DUCAは、今後もこのような、どこも引き取り手がないひどい状態の犬たち人間の手で不幸になってしまった犬たちの余生を実りある活動を続けて行きたいと考えています。

しかしそれを実現するためには、この活動を支えてくれるみなさまからの継続的な支援が欠かせません

人の手で不幸になったしまった保護犬たちのために、みなさまのお力添えをいただけたら幸いです。

公園でうれしそうに走る保護犬チェルシー