年末年始は、ペットショップが大盛況です。「クリスマスプレゼントに」とか「お年玉代わりに」とか昔からありますが、今もあまり変わっていないみたいですね。

寒い時期だから、ぬくもりを感じられるペットが人気なのもわかります。僕も最初は淋しかったのでペットショップに見に行きましたし・・・。

今は、犬の仕事にどっぷり浸かり、こういう保護活動をしている身としては、本音で言えばペットショップで買ってほしくないんだよな~と思いつつも、ペットショップで売れ残った子たちが売れ残っても・・・といつもヤキモキしています。
(早く海外のように適正飼育が厳格化されてほしいものです)

最近は多頭飼育崩壊による飼育拒否が増えていますが、すべてがすべて、ペットショップで買った犬とは限りません。

たしかに、ペットショップで買いっぱなしで、去勢や避妊もせずにあっという間に増えてしまったために近所から苦情が来て多頭飼育拒否というのや、離婚や病気などで生活に困窮しての多頭飼育拒否もあります。

こういったケースは、まだ、我々に頼ってくることで結果的に犬も救えるので、(大変ではあるものの)そこまで難しくないのですが、実際、「中々難しいな…」と思うのが、ブリーダーの多頭飼育です。

僕は愛犬デュッカをブリーダーさんの所から買い、犬の仕事をすることにしてから、そのブリーダーさんを通じて、ブリーダーの世界を知ることになりました。

そのブリーダーさんは幸い、犬に愛情を、仕事にプライドを持ってされている方でしたが、全員がそうとは限りません。人間関係がうまくいかなくて、ブリーダーでしか生活していけない、という人もいるのです。

ブリーダーは通常、10頭以上を多頭飼育しているものですが、ひどい場合は、一人で50頭以上飼っていたりと、明らかに面倒をみるのが無理な頭数を抱えている人もいます。

愛情がないわけではない人もいますが、基本一人でやりくりするために、ちょっとでも病気になったりしたら、すぐ飼育環境が悪化してしまいます。特に、ブリーダー自身の高齢化によって、今後はもっと増えていくのかなと思います。

実際、そういう現場に行くこともあります。

それはそれは酷い環境で、毛やうんち、オシッコがへばりついたゲージ。
 
掃除の行き届かない床、壁、悪臭。
 
ネズミ、ゴキブリ、ハエ…
 
匂いによる情報収集をする犬にとって、この悪臭、汚れはどれ程のストレスになるのか!
 
この間ブリーダーから保護した子は、複数回の出産を経た経験から、子どもにカルシウムをとられ、4歳なのに、歯がボロボロでした!!!
 
かといって、「こんなブリーダーはすぐ廃業させる!」「すぐに全頭連れ出せる!」となるかと言ったらそうはなりません。
 
法的には、犬など動物は物扱いとされている所有権の壁がありますので、保健所、愛護センターとしては狂犬病予防注射をしているか、施設の改善をすべきなどの「指導」にとどまります。
 
ブリーダーも生活がかかっていますので、所有者であるブリーダーが「飼育拒否します」と言って手放さない限り、保護することは中々難しい現実があります。所有権のカベをクリアしなければ、メディアが騒いでも、まったく事が進まないことも少なくありません。
 
むしろ逆に、明らかに外部の力が必要なのに、その力すら借りなくなってしまうことで、より悪化してしまうことだってあるのです。
 
 
無知やお金の問題で避妊や去勢をしていない素人の飼い主は、住処を奪われたくないので、苦情が来たら簡単に飼育拒否します。
 
でも、ブリーダーは・・・売れる以上、止めません。
しかも今は、ブリーダーが廃業する人が多いので、そのツテで引き取った犬を抱えているブリーダーも少なくありません。じゃぁ、その犬を簡単に手放せるかと言ったら、難しい。
 
しかもブリーダーが卸す値段が、今、ペットブームの頃の血統書付きの犬のような金額で取引されているとか!!
 
ペットブームが去って、卸す金額が下がっていたので、犬も売れなくなってきているし、自前の繁殖工場を持つペットショップも出てきたから、今もドンドン値下がりしていると思っていたのですが、そんな高値で取引されているとは・・・ペットショップの価格も上がるはずだ!
 
これでは、ブリーダーが、いくら自分の手に余るような環境になっていたとしても止めることはありません…。ブリーダーだけをどうにかすれば済むことではありません。
 
 
 
始めに言ったように、年末年始に、犬や猫はよく売れます。
 
でも、そういった犬や猫が、どこから来たのかよく調べたことはありますか?
 
ペットショップの「信頼できるブリーダーさんですよ」という言葉を鵜呑みにしていませんか?
 
もちろん、本当に信頼できるブリーダーさんもいるでしょうし、動物に配慮していると内外に公言している通りの、自家繁殖工場を持つペットショップもあるでしょう。
 
でも、そうじゃない所もあるという事実があることは、忘れないでほしいなと思います。
 
ブリーダーが一人で面倒みきれないくらい抱え、どんな劣悪な環境で生まれ育ったとしても、その子が何事もなかったかのように、セリ(生体オークション)に出されたり、直接ブローカーを通じてペットショップに卸され、店頭に出ていることもあるのです。
 
動物はしゃべらないですからね!!
 
 
そういった現実があることも踏まえ、新たな家族を迎え入れるんですから、家族のことをよく知っておいてほしいのです。「この犬種はこうで…」という教科書的なことではなく、どういう親から生まれ、どういう環境で育ってきたか、自分の今後のライフスタイルに合う子か・・・こういうことを疎かにして、失敗してきた例を何百と見てきているので。
 
ぼくのところには、毎度毎度「○○が困ってー」と家族の方が『しつけ』の相談で来る方が多いのですが、その原因を探るなかで、家族の方のしつけの失敗、トレーニング不足ばかりではなく、そのワンちゃんの2カ月までの乳児期の生育環境、親や兄弟とどう接したかが原因そのものだったりすることもよくあるのです。
 
だからヒアリングの中の質問に『どこで買いました?』とか『○○で買ったのでは』と言って当たってしまうこともよくあるんですよ(だからよく『目からウロコ』と言われるのかな?)。
 
だから、なんなら仔犬を買う時にもついていきたいくらいです。
 
 
ペットショップで買った生命とは、10年以上を共にするのです。
 
年末年始のイベントに沸き立つ気持ちではなく、一生面倒みる覚悟を持った上で考えてほしいと思います。
 
 
 
年末は、大掃除がてらなのか、悲しいことに犬を捨てる人が増えます。
 
でも、年末年始を過ぎると、「ペットショップ行ったけれど、やっぱり買うのは違うと思って…」と、ここに「里親になりたい」と言ってくる方が増えるのも事実です(「ペットショップは高いから保護犬いい」という人もいますが…)。
 
日本も少しずつ変わって来ていると信じたいと思います。
 
 
とりあえず、今週も立て続けに保護がありますので、その子たちの受け入れ準備に頑張ります!!
 
あと、高齢犬たちのためのクラウドファンディングにご協力をお願いします!!