家族が集まる「お盆」や「正月」は基本楽しいものだと思うのですが、僕たちのような動物愛護団体には「引き取ってほしい」という依頼が増えるときでもあります。

今回ご紹介するのは、先週問合せがあり、昨日保護にいたった案件です。

またまた高齢者からの保護

昨日、高齢者と暮らしていたミニチュアピンシャーを1頭保護しました。

関東地方に住む、高齢者の息子さん(おそらく60代くらい)から、

「83歳の父親が独り暮らしで脳梗塞で倒れて入院し、退院することが難しいようです。
犬が居るのですが、身内も親戚もペット不可物件で飼うことができません。
今は、ペットホテルに預けています。
里親、保護団体など色々と問い合わせても断られてしまいました」

という内容でした。

僕が保護活動を始めた2000年代~2010年代は、「咬みつく」「吠える」という理由で飼育放棄される子がほとんどでした。

しかし近年は、高齢者と暮らしていた犬の飼育拒否の問い合わせが大変増えており、

どこの団体さんからも

「最近、本当に高齢者の飼育拒否多くない?」

という声をよく耳にします。

超高齢化社会の日本、残されるのは小さな生命…

理由はいくつかあるのですが、

まず大前提として、世界一と言われている超高齢化社会があげられます。

特にその中で深刻な問題が、単身の高齢者が増えていることです。

つい最近、厚生労働省が出した報告書*によると、65歳以上の単身高齢者世帯の割合は過去最高のおよそ16.5%という結果が出ました。

*厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」より

これはつまり、全世帯の6分の1が「ひとり暮らしの高齢者」になっているということです。

今回のケースでも、83歳の高齢者がひとり暮らしで、淋しさを紛らわせるためかわかりませんが、犬と暮らしていたわけです。

このような高齢者世帯は日本全国どこにでもあると思われます。

かといって、親が病気や死別、施設入所などで、一緒に暮らしていた動物を手放さなければならなくなった場合、子どもが引き取ってくれるとは限りません。

子どもも高齢者に近い年齢になっている場合、おいそれと引っ越すわけにもいかず、経済的にゆとりがない世帯もあるでしょうから、「親の犬だから面倒みます」とは簡単には言えない状況もあります。
(お金があっても面倒見ない子ども夫婦もいます)

しかも今回は、「家の中がゴミ屋敷状態だった」そうですが、核家族化が進み、普段から親と疎遠に暮らす子どもも少なくなく、なおさら普段から接点のない犬との面倒をみます、とはなりにくい現実があります。

別の案件ですが、単身高齢者が身の回りのことができなくなると、このような状態になります

そのため、当団体でも、かつては3割ほどだった高齢者からの保護が、ここ数年で6~7割になるようになってきました。

「殺処分ゼロ」の裏側で、行き場を無くす犬たち

 また、動物をとりまく環境の変化もあります。

動物愛護法の改正で飼い主の「終生飼養」が義務化され、かつてはこういった犬を引き取っていた動物愛護センターや保健センターが、抑止のために「引き取りは殺処分にします」と言ったり(それでも捨てられた場合は保護団体に譲渡)、「殺処分ゼロ」を達成するために引き取りを拒否できるようになりました。

愛護センターがダメならと、動物愛護団体にを頼っても「愛護センターからしか引き取りません」「一般からの引き取りはしていません」などと言って断られることが多く、受け入れてくれても引き取り費用が高額だという理由で結果的に頼れない、ということもあります。

特に費用面でもケアの面でも負担が大きい、高齢者と暮らしていた犬に多い「高齢犬」や「病気のある犬」を積極的に引き取るところはまずありません

これは、どの団体もボランティアで活動しているため仕方のないことではありますが、その結果、高齢者と暮らしていた犬ほど、行き場をなくすケースが増えているのです

「殺処分ゼロ」はよいことで、かつては僕たちもそれを目標にして活動してきました。

僕たちや他の団体さん含め積極的な活動を続けて来た結果、ここ名古屋市では2016年に犬の殺処分ゼロ*を達成。
*収容時等死亡を除く(名古屋市動物愛護センター事業概要より)

今や様々な自治体で殺処分ゼロが進み、ようやく「殺処分ゼロ」が全国的に実現できる段階になって来ました。

しかし、このように、「行き場のないワンちゃん」が生まれ、結果的に高齢者が限界まで飼い続け、生命の危険にさらされている犬、実際に保護する前に生命を落とす犬が実際にはいます

末期の悪性黒色腫(メラノーマ)があるも、足を悪くした高齢者が動物病院に連れて行かず、保護後5ヶ月で亡くなったレーベン

動物たちの福祉、生きている生命を大切にする、心ある生き物を尊重するという、本当の意味での「動物愛護」ということを考えると、こういう子ほど幸せにしてあげるサポートこそが必要だと思うのです。

ワンちゃんたちに罪はないのですから。

高齢者が子犬を飼う現実

今回保護した子は、ミニチュアピンシャーの男の子、7歳でした。

飼い主は83歳ということですから、76歳前後でペットショップで迎え入れた子だと思われます。

今、動物愛護センターや保護団体に「里親になりたい」と譲渡会に行っても、60歳ないし65歳であればそれだけで断られるところが多く、なれても「同居する家族あり」などの条件があったりするものです。
もう一度不幸になる保護犬を増やさないためです。

そのため、

「自分の老い先を考えて保護犬を」「これまでの恩返しをするために保護犬を」と考えていたとしても、高齢者にとって「犬と暮らす」生活をするためには、ペットショップで子犬を迎え入れるしか選択肢がありません

しかし、迎えてみても、医療やフードの発達により犬の長寿命化が進み、飼い主より犬の方が長生きすることも増えてきました。

そのため、いざ、一緒に暮らせなくなったときの準備をしておかないと、犬が行き場を失います。

というのも、いまや7歳では高齢犬とは言えませんが、5歳を超えるととたんに里親希望者が減ります

そのため、里親募集サイトはもちろん、保護団体でも引き取らないケースもあります。
施設に残り続ける保護犬を終生飼養することは、かなりの負担だからです。

今回のケースでも、息子さんは方々問い合わせたようですが、どこからも断られたし、どこが信用できるかわからない、として結果、DOG DUCAのホームページを見つけ、「ここなら」と、わざわざ関東からここ名古屋に連絡してきました。

保護の枠組みから外れた保護犬の心も救う!

当団体は、高齢者と暮らしていた犬を、高齢者や一般の里親さんに譲渡する、【シニアドッグ・サポーター制度】をやっており、2019年から開始して、すでに90頭以上の高齢犬を、マッチング譲渡してきました。

これは、僕がドッグトレーナーとして1000頭以上の犬と向き合って来た経験から、保護犬と里親さんをマッチングさせて譲渡すれば、たとえ高齢犬でも高齢者でも共に幸せに暮らせると考えているためです。

もちろん中には譲渡ができない子もいますが、その場合は最期の時まで施設で、飼い犬と同水準の最大限の医療を提供して、スタッフやボランティアさんに愛情をいっぱいもらい、ここにいる保護犬や、わんわん保育園の通園犬と楽しく暮らすこともできます。

だから、どこも手を上げないワンちゃんでも、生命を救うための保護で終わらず、「ここに来てよかった!」「生まれてきてよかった!」と思ってもらえるよう、スタッフ一同全力で向き合っています。

今回保護したミニピンの子は、その息子さんがペットホテルに預けてくれているようですが、散歩はしてくれない、ケージに入れっぱなしになると言われたそうです。

狂犬病、ワクチン、シャンプー等はしていたようで、「昔の飼い方」をしている高齢者もいる中で、きっと愛情を持って育てて来てはいたのでしょう。

しかし、「いざ」という時は、残酷にやって来ます。

そして、大切な愛犬が、このように行き場がなく、ずっとケージに入ったまま「もらい手」を探すまで待つことになりました。

DOG DUCAでは、そういったワンちゃんの心も救うため、まずは精神的に安心させて、病院での治療、去勢避妊手術を行っていきます。

「ここに来てよかった」

「生きてて幸せだ」

と感じてもらえるように、この子のサポートをしていきます。

シニアドッグ・サポーター制度が広まってほしい

シニアドッグサポーター制度を行うことで、高齢者と高齢犬が幸せを掴む一方で、高齢者の方が飼われていていたけど「飼えなくなった。引き取ってほしい」という相談も比例して増えています。

それはひとえに、飼育経験豊富で愛情もあって元気な高齢者と、高齢者と暮らしていた犬(多くが高齢犬)を受け入れる社会の仕組みがないからです。

DOG DUCAのシニアドッグ・サポーター制度は、里親になりたい高齢者と、高齢者と暮らしていた保護犬をマッチングさせて、お互いが支え合い、幸せになる仕組みです。

こういった取り組みがあること。

こういった取り組みでたくさんの犬も人も幸せになっていること。

高齢化社会における行き場のないワンちゃんがいる現実とともに、もっと多くの人に知ってほしい。

そして、日本全国に広がっていってほしい

「命だけ救えばいい」ではなく、
「心も救う」のが当たり前になるような、

真の動物愛護が日本に根付いてほしい。

このプロジェクトは、僕たちの活動継続のためでもありながら、それ以上に、そういった社会に対するメッセージでもあります。

どうか最後まで、ご支援、応援、拡散、よろしくお願いいたします。

「生命を救う」その先の、真の動物愛護社会の実現のために。