8月に保護した、トイプードルのクローバーという子がいます。

先日、里親になりたい方がおられたので面談したのですが、前回来られなかったご家族の方と一緒に来て、クローバーのことをとても気に入ってくださり、週末からトライアルすることになりました。

クローバーは、栄養不足で体重も少ないので、体重を増やしてから去勢手術をすることになりましたが、それもやっていただけるという良い方です。実はこのクローバー、「放浪犬」として保護した犬でした。

ここに来た時は下の写真のように、「なんでこうなったの??」というような状態で、スタッフがすぐにトリミングしました。

トイプーは、放っておくとカールした毛が伸び放題になり絡まるので、定期的にトリミングする必要があるのですが、それがまったくされていない状態でした。しかも毛が皮膚にこびりついており、普通にハサミで切るのが難しく、1mmのバリカンとボブハサミを使いながら丁寧に刈ることに・・・。

 

 

犬の毛は、普通にバリカンをすると、人間の髪の毛と同じように、毛はハラハラと落ちていくものですが、この子の場合、完全にくっついてるものですから、このように皮がめくれたような状態に・・・これでは生活もしにくかったことでしょう!

この子を保護した経緯は、「近所で放浪している犬を保護したが、警察にもセンターにも連絡したが誰も飼い主が現れない。引っ越しをするから保護してほしい」といって相談があり、引っ越しの前日にここに連れられたという流れです。

連れてきてくれた方は、とても感じのよい、優しそうな中年男性で、この犬はお子さんにも噛まず、トイレもシートでちゃんとする、とご丁寧に伝えて帰っていかれました。

実際、性格は人懐っこく、子どもから大人まで誰にでも甘えます。ただ、叩かれていたようで、人の手を見ると身をすくめる仕草をします。表情も固く、トイプーの割にしっぽも振らないため、感情があまり読み取れません。

どうも、毛がずっとこびりつき、皮膚がずっと引っ張られていたので体中の筋肉が固まってしまい、表情筋も固くなってるので表情に乏しく、しっぽも動かすと痛くて動かせないようです。人間も毛が固まっていたら痛いのと同じですし、この子の場合はそれがずっとだったのです!

また、本来は垂れ耳であるはずのトイプードルなのに、固まった毛に引っ張られて、このように耳が浮いた状態で固まってしまっています

よほどひどい飼い主に飼われていたのか・・・とにかく、ずっとほったらかしにされ、飼育放棄の末の放浪だと思うには十分でした。それくらい状態がひどかった。衛生面でもそうですが、本来、トイプーは活発な性格で遊ぶのが大好きですから、体が痛くてそれもできない・・・そんな風にした飼い主の責任は重いです。

ところが先日、クローバーを保護したと言っていた地区の知り合いに会う機会があったので、トリミング前の写真を見せたところ、「この犬見たことあるよ」とのこと。

えっ?

・・・聞けば、小さな男の子と散歩しているのを見たというのです。しかも結構な頻度で見るので、近所では有名な犬だったようです。

放浪犬ではなく、飼い犬の時から、あの状態だった!?

しかも、散歩にも行く飼い主がいる。
なのに、放浪犬になり、保護して、警察やセンターに届けたけど、飼い主が現れなかった・・・そこから、それは全部ウソで、「その、連れてきた人が飼い主だったのでは?」という疑惑が急浮上!!

にわかに信じがたい話ですが、スタッフが思い当たるフシがあると。

あれだけ毛がひどい状態だったのに、ノミが一匹もいなかったのです
放浪していてあの状態になったら、屋外で寝泊まりするので、普通はノミが喜んでよってくるハズ。それが「まったくいない」ということは、家の中で飼われていた可能性が極めて高い。

しかも、知人によると「男の子が散歩していた」という情報でしたが、連れてきた人にも小学生の男の子がいるとのことで、なんなら連れてきた男性は「子どもになついていた」と言っていました。

僕はどうにも人を信じすぎるきらいがあるので、にわかに信じられませんが、スタッフからは、おかしい所をどんどん指摘されました。

その人は、「一週間保護していた」「家の中では悪さしなかった」と言うのですが、うちのスタッフがすぐトリミングするような状態の犬を、犬を飼っていない家庭で、一週間も一緒にいられるのか?

なぜ、犬を飼っていないのに、「トイレもシートでする」と言っていたのか?
なぜ、引っ越しの「前日まで」保護できたのか?
なぜ、近所でも有名な犬なのに、なぜ誰も保護すると手を挙げなかったのか?

・・・おそらく、引っ越しするのは本当で、その機会にクローバーを捨てることにしたのでは?と。誰にも怒られず、拒否されない方法で。自分で警察やセンターとかに「電話したこと」にすれば、こちらから電話されることはなくなると。

でも・・・あんな、感じのいい男性が!?

考えてみれば確かに、迷子犬を保護する優しい人のわりに、連れてきた時に、保護していた期間中に食べていたはずのドッグフードやトイレシートを持ってこなかったのは不自然です。飼育放棄する人なら別ですが、優しさで一時的に保護した人なら、その子が食べるのに困らないよう、食べ慣れていたものを持ってくるものです。

それに、つけてきたリードを持って帰ったのです。一時保護なら、引っ越すなら、いらないはずじゃないでしょうか?

・・・そんな!

ひょっとしたら、昔飼っていた犬のリードやサークルかもしれませんし、それも今となっては確かめようもありませんが、これまでの「迷子犬を保護」してくれた人たちと違う状況証拠からすると、それが真実のような気もします

(犬の声が聴けるアニマルコミュニケーターの荒木さんに聴いてもらっても、クローバーは「秘密だから言えない」としか言わないそうです・・・)

スタッフにも言われましたが、おそらくその、「とても感じのいい人」は、怒られるのが怖かったのかもしれません。

あの状態でトリミングルームに行けば、どこへ行っても間違いなく、ここまでの状態にしたことを怒られるでしょう。引っ越すから引き取って欲しいと愛護センターに行けば、怒られたり突き返されたりするでしょう。

だから、嘘をついてまで、飼い犬を「放浪犬」ということにして捨てた。

そう考えるほうが自然な感じがしてきました・・・。

真実はわかりませんが、どちらにしろクローバーは、こんな状態にしていた元飼い主さんの元を離れて正解だったと思います。栄養失調状態ですし、体罰もあったようですから・・・。

僕たちはだまされた(かもしれない)ことはいいのです。

でも、この子は10才くらいです。
こんな形の別れはどうなんでしょうね??

犬は、自分が「捨てられた」ということがわかります。だけど、犬は心優しい生き物なので、飼い主を「恨む」といったことはしません。

でも、だからこそ・・・ちゃんとしたお別れをしてほしかった、と思います。犬にも感情がありますから!!